雪になりたい椿の日記

雪になりたい椿(ユキツバ)の日記です

5月に読んだ本

 

命売ります

三島由紀夫 / ちくま文庫

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

 

 


落下する夕方

江國香織 / 角川文庫)

落下する夕方 (角川文庫)

落下する夕方 (角川文庫)

 

 


『親離れできれば生きることは楽になる』

加藤諦三 / PHP文庫)

 


『氷の海のガレオン / オルタ』

木地雅映子 / ピュアフル文庫

 


対岸の彼女

角田光代 / 文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

 

 


『歩道橋の魔術師』

(呉明益 / 白水社

歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)

歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)

  • 作者:呉明益
  • 発売日: 2015/04/24
  • メディア: 単行本
 

 


『悲しみの秘儀』

若松英輔 / ナナロク社)

若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義

若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義

  • 作者:若松 英輔
  • 発売日: 2015/11/27
  • メディア: 単行本
 

 


『孤独の価値』

森博嗣 / 幻冬社新書)

孤独の価値 (幻冬舎新書)

孤独の価値 (幻冬舎新書)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2014/11/27
  • メディア: 新書
 

 


『つめたいよるに』

江國香織 / 新潮文庫

つめたいよるに (新潮文庫)

つめたいよるに (新潮文庫)

 

 

 

 今月はあまり読書に時間をさかなかった。前に読んだことのある本や、読みやすい本ばかり読んだ。それで九冊だから物足りない。来月はもうすこし読もう。

 

 承認欲求が大きくなっている。Twitterもブログもやらず、創作アカでも全く作品を公開していないから、なにか、フラストレーションが溜まっている。誰かに視認されたい。

 

 けど、今は長編を一刻も早く完成させたいから、暇があればすべて長編作成にあてたい。スーパー遅筆野郎だから時間を投入しないと永遠に完成しない。やっぱり、ブログやTwitterは暫くスローペースにしたい。

 

 どうしよう…と迷った末、「去年、創作アカウントで毎日公開していた習作ショートショートを、このブログにあげたらいいのでは?」という考えが浮かんだ。

 

 本当にやるかどうかはわからないけど、もしかしたら突然、下手くそな小説が公開されるかもしれません。そうなったら…優しく見守っていただけるとありがたいです。

 

 長編も、完成したら一瞬だけここにリンク貼るかもしれません。順調にいけば今年の夏が終わるまでに、完成します。順調にいけば、です。けど順調にいかないのが人生なので…いや、まあいいです。もしもの話しても仕方ない。

 

 承認欲求、と書いてしまったけど、視認欲求のほうが正確な気がする。誰かの視界におさまりたい。いるんですここに、この子(自分の心なかのその一部)が、見てやってください…みたいな。褒めなくていいので視認してほしい。それも承認欲求か。わからないな。

スペース

 

 小説執筆に集中すると日常が疎かになる。そして知らないうちに、日常の些細な出来事が頭に溜まっていく。散らかった部屋を前にしたような気分になる。途方もない。でも、すこしは片付けないと落ち着くスペースもない。

 

 長いあいだ一人きりでいると、昨日と今日の区別が曖昧になってくる。変わらない毎日が連なって、遠くへ行けば行くほど判別がつかなくなる。昔のことがよく思い出せない。誰かとの会話も、遠ざかると、街の雑踏のような内容のわからない声のさざめきになる。きっといつか聞こえなくなくなって、そこにあることだけを確認するようになるのだろう。そうなったとき、その誰かのことを懐かしいと思えるのだろうか。

 

 晴れた日の線路沿いには、必ず手をふっている子どもがいる。正しくは、手をふらされている子どもがいる。大人に抱っこされて、多分、本人的にはいまいちピンときていないような顔で電車に手をふらされている。それを見ると、僕はいつも「手をふりたいのは子どもじゃなくて、大人のほうなんじゃないか」と思う。子どもの手を借りないと、大人はなかなか無邪気になれないんだ。でも、大人だって手をふっていいんですよ。そしたら僕も控えめに手をあげて応えるくらいのことは、します。

 

 軒下に蜂が巣を作っていたので、殺虫スプレーを買ってきて自力駆除した。まだスプレーの中身が余っていたから、予防のためにどこかへ吹きつけておこうと思って、なんとなく祖母の家を覗いてみた。そうしたら玄関の真上にオオスズメバチの巣があった。怖い。なにが怖いって、祖母がそれに全く気がついていないことが怖い。嘘でしょう。どうしてこれに気づかないの。腰が曲がってるからか。速やかに駆除した。

 

 悪夢を見た。吸血鬼の姫が、十歳くらいの少年に「なにかひとつだけ欲しいものをあげる」と言っていた。少年は「あなたの心臓の血がほしい」と言った。吸血鬼の姫は服をぬいで、自分の胸をナイフで丁寧にひらくと、最後に心臓を刺した。彼女は不死身だからそんなことでは死なない。吸血鬼の姫は「これで私たちは一番深い場所でつながることができる」と言って、今度は少年の胸にナイフを突きたてた。少年は人間なのでそれで死んでしまった。この光景を俯瞰で見ていた僕の胸に、少年の身体の痛みがリンクしてとても苦しかった。その後、なんらかの理由で吸血鬼の姫も死んだ。彼女は死後、大量の蝙蝠の死骸に変化した。蝙蝠の死骸に埋もれるように少年の死体があった。眠る前にホラー映画のサウンドトラックなんて聴くから、こんな夢を見るのだと思う。

 

 夢のなかで、僕はよく心臓を刺されたり、撃たれたりする。なんなのだろう。身体からの危険信号か。心臓に疾患でもあるんだろうか。

 

ブレイブ・ストーリー

 

 本、読んでない。

 

 最近ずっと書くほうに専念していた。暇さえあれば文章を考える日々。ブログもSNSも放置。今月のネットはなにが話題だったのかな。本もドラマもお預け…お預け、というか「インプットよりアウトプットがしたい」の想いで隙間時間が埋まっていくから、読んだり観たりする時間がなかった。

 

 そんなに頑張って書いたのに、昨日になって「今月分はすべて書きなおさなければならない」という嘘みたいな事実に気がついて呆然とした。さようなら三万文字。なんて不器用な物書きだろう。順調にいけば7月に公開予定だった長編は公開が延期になった。この流行にはのりたくなかったな。

 

 ぼんやりしながら出勤。どうしてか、こういう時にかぎって悪いことは重なる。本社から現場研修のために仮配属されているMさんとNさん。二人とも挨拶を返してくれないな、とは薄々思っていたのだけど、今日、そういうことだと確定した。嬉しくない特別扱いを、僕はしていただいてるみたいだ。ああそうなんだ。血の気がひいた。社会人になってまだそんなことしてるんすか、と言えなかった。無視するのが精一杯。

 

 悲しい。彼らは、どうやって僕みたいな人間を見分けるのだろう。やっぱり挙動がおかしいのかな。それとも話し方か。そんなふうに自分の落ち度を全力で脳内検索してしまう神経回路を幼少期に叩きこまれた人間にしか、この悲しみはわからないと思う。社会人になってもまだいるんだ。あんまり酷かったら上司に報告しよう。けどあと一週間であいつらいなくなるから、僕は我慢するんじゃないかな。

 

 悲しい。昨日は、長い間お世話になったOさんが突然うちの現場から異動になった。昨日というか今日からか。「私ここ今日で最後なんですよ」と教えてくれた。教えてくれただけありがたい。たっぷりと、お世話になったお礼を言った。「また戻ってくるかもしれないけどね」と笑っていたけど、多分もう二度と会わないと思う。そんな予感。さようならOさん。周りの人ばかり変化していく。自分だけが変わらない。平凡な感傷がとても苦しい。

 

 最近またコミュニケーション能力のことで悩んでいて、さっき書いた仮配属されてるNさんがうちの社員のAさんやIさんと楽器やゲームセンターの話題で盛り上がっているのを見て「ああ、平凡って彩り豊かなものなんだな」と思った。四人で作業してるのに僕だけが蚊帳の外。おかしいな。僕は楽器もやってないしゲームセンターなんて二回くらいしか行ったことがない。三人がなにを言ってるのか全くわからなかった。汚れてもいないゴム手袋を熱心に拭いてその場をやり過ごす。

 

 優しい物語と、洒脱な文章を読みたい。うちの本棚にあるだろうか。とても本を読む気分じゃないが、こんな気分を記憶に残したくないのだ。宮部みゆきの『ブレイブ・ストーリー』読みたいな。カポーティの『ダイヤモンドのギター』読みたいな。全然優しい物語じゃないけど。それに土日じゃ読み終わらないかな。

 

 高校生のとき、KOKIAの『大事なものは目蓋の裏』とアニメ映画版『ブレイブ・ストーリー』のMADがユーチューブにあがっていて、それを延々と観ていた。17歳の俺、26歳の俺は、君と同じような気持ちになってるよ。そんな人生になるんじゃないかとは薄々思っていた。もうあのMADは著作権法違反のため削除された。また誰か上げてくれないかな、なんて悪いことを願ってる。

 

 

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

 

大事なものは目蓋の裏

大事なものは目蓋の裏

落下する夕方

 

 非常事態宣言の延長。先週シャッターをあけてくれた本屋さんがまたシャッターを降ろした。今度こそ月末まで開かないだろう。仕方ない。仕方ないけどやっぱり肩がおちる。

 

 今朝目が覚めて、机の上にある積読本を見て「あれはまだ読む気にならないな」と思った。積まれて一年以上すぎた猛者しかいない。なら今日からなにを読めばいいんだろう。再読する本をえらぶのは、未読の本を物色するより頭をつかう。内容を知っているから。今の気分と正確に一致する本でないと読む気にならない。

 

 それで、本棚をながめた結果、なんとなく読めそうだったのが江國香織の『落下する夕方』だった。懐かしい。二十歳くらいのころに一度だけ読んだことがある。あとがきが印象的だった記憶。内容はうろ覚えだった。

 

 別れ話→記憶が曖昧で、よく憶えていない数日間。 晴れた日が続き、私は散歩ばかりしていたように思う→ 原因の告白(どうでもいいことだが、原因は女、だった。 好きな女ができたのだという。私よりも? と訊くと、健吾は犬のように悲しい目をして、うん、と言った。 正直は幼児性の一つだと思う)→いっそ気楽だった数日間、 私は考えることを放棄した→再び別れ話(具体的に)→ 健吾の荷造り、部屋探し→最後の晩餐→引越し、と、 ひととおりの手順は踏んだが、 そんな手順に意味は無論はじめからない。
 健吾がいなくなる。
 それが事実のすべてだった。私は、 自分がどのくらいダメージを受けているのかわからない。


(『落下する夕方』p11-12)

 

 私は椅子にすわるなり、健吾のパイを一口食べた。 ほんとうは死ぬほどどきどきしていた。
「おいしい」
 健吾はあきれた顔で少し笑う。おいおい、という顔だ。 おいおい、これはもっとしんみりした場面だぞ。
 私は知らん顔で横を向き、濡れた傘をさっとたたむ。 あかるい気持ちになっていた。それでも、 呼びだされて嬉しかったのだ。雨の日の、店のなかの湿度、 そして湿度。
「あいかわらずだなあ」
 大きく両頬にくっきり皺ができる。このひとの、 その安心な皺が好きだった。
「元気?」
 私ははしゃいでいるようだった。 健吾はやつれているというのに。
「新しい生活はどう」
 まあな、と、よくわからない返事をして、 健吾は煙草に火をつける。私は、 このひとの吸う雨の日の煙草が好きだった。 煙草を持ったときの手の甲の感じが、そのしずかさが好きだった。


(『落下する夕方』p21-22)

 

 気分にあう。この選書は完璧だった。江國香織は天才だな、と思う。そういう書き方をしていいんだ。たぶん江國香織はこれをさらさら書いているのだろう。僕なら、この書き方は勇気がいる。

 

「大人と子供とどっちが楽しいか知ってる?」
 デッサンから顔をあげ、直人くんが訊いた。
「さあ、どっちかしら」
 直人くんのデッサンは力強い。 なにをかいてもバランスがひどくかたよってしまうのだが、 迷いのない線がときどきとても美しかったりする。 熱中するたちで、鉛筆を使うときまって両手がまっくろになる。
「大人だ、ってお父さんは言うんだけどね、 ハナコちゃんは子供だって言うんだ」
ハナコちゃん?」
 その名前をきいても私はおどろいたりしなかった。 まさかあの華子だなどとは思わなかったのだ。
「うん。こないだ一緒にたこ焼きを食べたハナコちゃんだよ、 先生の友達の。いま僕んちにいるんだ。先生知らなかったの?」
 それでね、と言って直人くんは一人で喋る。
「お父さんは大人の方がスリリングで楽しいって言うんだけどね、 ハナコちゃんは子供だって。“いい気な大人”は叱られるけど、 子供はいい気なもんでもかまわないからだってさ」
 あちこちから鉛筆の音、冷房のきいた清潔な教室、 たくさんの紙の上のたくさんの手のひら。 いったいどういうことなのだろう。


(『落下する夕方』p93-94)

 

 これとか。うらやましくなる。僕なら、選択肢には浮かんでも、精神力をつかうから、なんとなく避けてしまう書き方だ。「あちこちから鉛筆の音、冷房のきいた清潔な教室、たくさんの紙の上の手のひら。いったいどういうことなのだろう。」こちらの台詞だ。いったいどういうことなのだろう。血管に言葉がながれているのだろうか。

 

 朝昼晩と、時間を探して必ず小説を書くようになった。僕にしてはすばらしい。小説の感動があがってる。江國香織の文章はすばらしい。僕はそうは書けない。それでいい。他人なんてよその宇宙だ、と思う。関係ないし関係できないんだ。自分の生きている場所を黙々と研究したい。

 

 

* * *

 

 

 日常のことは、夜になると忘れてしまう。それなりにいろいろあるのだけど。日記なのに書けることがない。読書日記にするつもりはないけど読書のことばかりになる。

 

 雷が鳴っている。雨が降り湿った夜。長い髪の毛がむれて痒い。髪を切りたいのに理髪店がやってない。本当に困ってる。バリカン買って自分でツーブロにしてみようかな。多分やらない。言ってみただけ。

 

 

落下する夕方 (角川文庫)

落下する夕方 (角川文庫)

 

 

 僕が持ってる『落下する夕方』はこれじゃなくて、薄桃色の背景に、金箔の線でイラストが描かれた、とても素敵な表紙のもの。Amazonにはないのだろうか。

 

4月に読んだ本


『哀しい予感』

吉本ばなな / 幻冬舎文庫

 

哀しい予感 (幻冬舎文庫)

哀しい予感 (幻冬舎文庫)

 

 


森田療法

(岩井寛 / 講談社現代新書

 

森田療法 (講談社現代新書)

森田療法 (講談社現代新書)

  • 作者:岩井 寛
  • 発売日: 1986/08/19
  • メディア: 新書
 

 


悪童日記

アゴタ・クリストフ / 堀茂樹 訳 / ハヤカワepi文庫)

 

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

 

 


『恋歌』

(朝井かまて / 講談社文庫)

 

恋歌 (講談社文庫)

恋歌 (講談社文庫)

 

 


『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』

(カル・ニューポート / 池田真紀子 訳 / 早川書房

 

 


『氷』

アンナ・カヴァン / 山田和子 訳 / ちくま文庫

 

氷 (ちくま文庫)

氷 (ちくま文庫)

 

 


『私の頭が正常であったなら』

(山白朝子 / 角川書店

 

私の頭が正常であったなら (幽BOOKS)

私の頭が正常であったなら (幽BOOKS)

  • 作者:山白 朝子
  • 発売日: 2018/02/10
  • メディア: 単行本
 

 


『真夜中のすべての光 上 下』

富良野馨 / 講談社タイガ

 

真夜中のすべての光 下 (講談社タイガ)

真夜中のすべての光 下 (講談社タイガ)

  • 作者:富良野 馨
  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: 文庫
 
真夜中のすべての光 上 (講談社タイガ)

真夜中のすべての光 上 (講談社タイガ)

 

 


恋愛依存症

伊東明 / 実業之日本社

 

恋愛依存症 - 苦しい恋から抜け出せない人たち

恋愛依存症 - 苦しい恋から抜け出せない人たち

  • 作者:伊東 明
  • 発売日: 2015/03/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 


『倚りかからず』

茨木のり子 / ちくま文庫

 

倚りかからず (ちくま文庫)

倚りかからず (ちくま文庫)

 

 

 

 先月末にお気に入りの本屋さんが閉店した。コロナウイルスの影響で僕の生活に変化があり、3月は全くその本屋さんへ立ち寄れなかった。そんなこと今までなかった。よりによってその間に閉店のお知らせが掲示され、そして閉店してしまった。

 

 ショックだった。世間が有名なコメディアンの死に沈んでいたころだった。その社会の雰囲気が、喪失感に輪をかけたようになった。「読みたい本」が見つかるだけでなく「読みたい」が見つかる本屋さんだった。そんな本屋さんは滅多にない。

 

 そして非常事態宣言が発令されて、生活圏にある本屋さんはすべて休業してしまった。本が自分から離れていく感覚になった。

 

 それでも心を持ちなおして、今月は再読月間にすることにした。頭に浮かんだのはアンナ・カヴァンの『氷』と、山白朝子の『私の頭が正常であったなら』だった。どちらもここ数年の間に出会った本で、既に何回か読みなおしている。自分にとって大切な本だ。

 

 この両作をゆっくりと読んでいる間に、駅の本屋さんがシャッターを開けてくれた。嬉しかった。閉店した本屋さんのことが頭にあった。「ここは絶対に閉店させない」と思って小説を買った。富良野馨の『真夜中のすべての光』を選んだ。

 

『真夜中のすべての光』は、人が喪失と向き合う物語だった。上下巻を一気に読んだ。主人公の選択が静かに心をうった。今あるものを見つめようという気持ちが芽生えた。

 

 本屋さんのことだけではない。これまでの人生で失ったもの。失ったものを失ったまま、今を生きる術をこれからも探していこう。すべての今はやがて過去になる。振り返ることはいつでもできる。失ったものは消えたわけではない。

3月に読んだ本

 

『旅に出る時ほほえみを』

(ナターリヤ・ソコローワ / 草鹿外吉 訳 / 白水社

 

 

 白水社の棚はなんとなく覗いてしまう。良い海外文学がないかなと。この本もなんとなく覗いてみたら目についたので、なんとなく購入。《人間》や怪獣17Pの悲哀。執筆された背景を考えるとこの寓話にどのようなメッセージが込められているのかわかるような。切ないSFでした。

 


『誰にも言えない「さみしさ」がすっきり消える本』

(石原加受子 / SBクリエィティブ)

 

誰にも言えない「さみしさ」がすっきり消える本

誰にも言えない「さみしさ」がすっきり消える本

 

 

 確かに読んだのだけど内容をあまり覚えていない。

 


『未必のマクベス

(早瀬耕 / ハヤカワ文庫)

 

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:早瀬 耕
  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: 文庫
 

 

 おもしろかった。犯罪小説であり恋愛小説でもある。600ページくらいあったので二週間くらいかけて少しずつ読んだ。充実した二週間だった。

 

 登場人物の森川佐和という女性を『id:INVADED イド:インヴェイデッド』に登場する本堂町小春で脳内キャスティングしてしまったので、必要以上に森川佐和の可愛い物語になってしまった。

 

 余談だけど『id:INVADED イド:インヴェイデッド』は今期冬アニメのなかで個人的に一番おもしろいアニメだった。こちらもおすすめ。

 


『なんで僕に聞くんだろう』

(幡野広志 / 幻冬社

 

なんで僕に聞くんだろう。

なんで僕に聞くんだろう。

  • 作者:幡野 広志
  • 発売日: 2020/02/06
  • メディア: 単行本
 

 

 Twitterなどでよく見かける、幡野広志さんのお悩み相談…をまとめた本。『悩み相談でいちばん大切なことは、相手の答えを探ることだ。答えは悩む言葉のなかに隠れている。 悩み相談は相手を分析する作業だ。男性がやりがちな「問題解決」だけでも、女性がやりがちな「共感」だけでも足りないのだ。この二つがうまくミックスされたものが悩み相談に必要だとおもっている。』という言葉どおりの解答がずらっと書かれている。とても良かったですよ。

 


『外は夏』

(キム・エラン / 古川綾子 訳 / 亜紀書房

 

外は夏 (となりの国のものがたり3)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

  • 作者:キム・エラン
  • 発売日: 2019/06/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 以前ブログに少し感想を書いたので詳しくはそちらを。何周もしたくなる小説だった。

 

外は夏 - 雪になりたい椿の日記

 


方法序説

デカルト / 谷川多佳子 訳 / 岩波文庫

 

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)

  • 作者:デカルト
  • 発売日: 1997/07/16
  • メディア: 文庫
 

 

 我思う故に我あり。しかし我にはこれはいまだに難しい。名言拾いに終始してしまう。また出直してきます。

 


『死にたい夜にかぎって』

(爪切男 / 扶桑社)

 

死にたい夜にかぎって

死にたい夜にかぎって

  • 作者:爪 切男
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 世の中にはいろいろな人生があるんだな(小並感)というエッセイ。自分の人生だけを見つめていたら触れようのない世界。多少は脚色しているのだろうとは思う。普通にありのまま書いたらつらくて読んでいられないエッセイになりそう。

 


『ザリガニの鳴くところ』

(ディーリア・オーエンズ / 友廣純 訳 / 早川書房

 

ザリガニの鳴くところ

ザリガニの鳴くところ

 

 

 これもブログに感想を書いた。この本が500万部売れるアメリカはすごい。

 

ザリガニの鳴くところ / medium - 雪になりたい椿の日記

 


『medium 霊媒探偵城塚翡翠

相沢沙呼 / 講談社

 

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

 

 上の『ザリガニの鳴くところ』のところに貼ったブログ内でも書いたけど、ミステリなので詳しい感想を言えない。「まんまとしてやられた」という感じ。おもしろかった。ドラマ化したらかなりウケると思う。

 


『星の子』

(今村夏子 / 朝日文庫

 

星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

  • 作者:今村夏子
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: 文庫
 

 

 今村夏子さんの文章、本当にさらさらしていて、少しでも小説を書こうとしたことのある人ならわかると思う、そういう文章が一番マネするのが難しい。ディテールに凝りすぎていないからと言って内容が薄いわけではなく、むしろ登場人物達の仕草や声が生き生きと伝わる。すばらしい。巻末に載っている小川洋子さんとの対談もよかった。

 


『しんせかい』

山下澄人 / 新潮文庫

 

しんせかい (新潮文庫)

しんせかい (新潮文庫)

  • 作者:山下 澄人
  • 発売日: 2019/10/27
  • メディア: 文庫
 

 

 マネするのが難しい文章パート2…芥川賞受賞作品だからあたり前かな。文章のリズムが良い。書くことと書かないことの取捨選択がユニークだなと思った。ぽんぽん話が進んでいく。必要なことだけ書いているようで、けど実際、主人公は迷ってばかりいる。不思議だ。自分には書けそうにない。

 

 

 * * *

 

 

 3月は読書満足度の高い1ヶ月になった。4月もそうなるといい。読むべき本より読みたい本を読もう。今はなんとなくSFの気分。

 

スカイ・クロラ

 

 近所の中華料理屋に入ったら、店のお姉さんに「お兄ちゃん何歳になったの?」と訊かれた。「26です」と言ったら「26!」と目を大きくしてた。厨房から「26か〜」とお兄さんの声も聞こえた。消防団に誘われたら嫌だなと思って「へへっ」と笑って逃げた。

 

 炒飯とレバニラを噛みながらネットサーフィンをしていたら、ノスタルジーを誘う日本の田舎の風景、的なタイトルの写真を見かけた。広大な田園の背景に、青く深い山々。素敵な写真だ。確かにノスタルジーを刺激される。けど僕は関東平野生まれ関東平野育ちだから。この田舎には山がない。そんな田舎は関東くらいにしか存在しないのかもしれない。いや北海道にもあるのかな。このノスタルジーは本物のノスタルジーではないかもしれない。

 

 時々「景色の果てに山があると安心する」とかいう言葉が、わかるわかる、田舎出身あるあるだよね、みたいに言われているのを見かける。僕も田舎の人間なのだけど全然あるあるじゃない。けど全国的には山の存在は田舎あるあるなのだろう。邦画に出てくる田舎には大抵山がある。平野の田舎はあまり出てこない。出てくることもあったと思うんだけど、映えないからか、あまりない。

 

 邦画の田舎よりも、アメリカの映画とかに出ててくる、広大な平原とかのほうが胸をくすぐられたりする。どこまでも延々と道が続く光景。思い出した。邦画では、押井守監督の『スカイ・クロラ』も子どものころCMを見て気持ちが引き寄せられた。空が広い。飛行場の周りに高い山や建物はない。わかる。ここら辺がそうだ。カンナミや草薙のポーカーフェイスも、むっつりしてる田舎人の表情を連想する。

 

 けど、山は好きだ。ここにもあったらいいのにと思う。森が好きだから。子どものころは森が友達でしたというと嘘になるけど、木々をかき分けて、ナナフシの降る林道をせっせと歩いて、木立の隙間に胸をとめかせる子どもだったから、森への憧れがつよく身体に染みついている。山なんて森の集合体みたいなものだから(知らないけど)子ども心にはたまらなかった。山間に廃村や廃寺があったら最高。

 

 お腹空いてるしと思って、久しぶりに炒飯を大盛りにしてみたら、全然胃に入らなくて、吐きそうになった。残す選択肢はない。この中華料理屋の人たちは怖い。多分若いころはヤンキーやってたんじゃないか。今も眉毛薄いし言葉つよいし。お兄さんもお姉さんも眉間に力がありガタイもいい。食べ残したら普通に「おいてめえ」とテーブル叩かれそう。

 

 とはいえ味はとても美味しいから、なんとか口に入れて、満腹になって、席を立つころには酸欠みたいになっていて、食べてるとき何を考えていたんだか忘れてしまった。山と田舎以外のことも沢山考えていたはずなんだけど。「ごちそうさまです」と頭を下げると「はい、ありがとねー」と返事がきた。最近、徐々にわかってきたのだけど、この人たちは僕が恐れているほど怖い人たちではない。

 

 暖簾をかき分け外へ出ると田園のさきに森。工事の車が何台か遠くの畔道に止まっていた。森を切り開いて道路を作るそう。山もないくせに森も削られるのか、田舎から自然をとったらなにも残らないぞと思いつつ、ふと子どものころ「田んぼ全部つぶしてイオンできればいいのに」と考えていたことを思い出す。森が好きだった子どもの自分は、あれ、どっちが本当だったかなと考える。多分どっちも本当なんだろう。子どもの憧れも大人のノスタルジーも都合がいい。

 

 帰ってきてから体重計に乗ったら73キロあった。中学時代の倍はある。夏までに痩せよう。新しくできるという道路を見学がてらランニングするのもいいかもしれない。

 

 

スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2004/10/01
  • メディア: 文庫
 
スカイ・クロラ (通常版) [Blu-ray]

スカイ・クロラ (通常版) [Blu-ray]

  • 発売日: 2009/02/25
  • メディア: Blu-ray