雪になりたい椿の日記

雪になりたい椿の日記です

 今日は朝から気が立っていて、休日なのに無性に手をうごかしていたくて仕方なく、メモ帳に月の生活費の計算を書きつけたり、提出期限がまだまだ先の年末調整の書類を片付けてしまったりした。

 心の声に潤いがないから読書をしたい。なのに、生活から離れた世界へ行こうとする自分が許せない。「現実逃避は許さない」という意思がはたらいて読書を遠ざけてしまう。そんなふうにしていたら疲れるよ、ガス欠するよ、返って効率が悪いよ、と頭の隅でいちおう考えてみる。コーヒーを飲んだり運動をしたり、湯船にゆっくり浸かったり、そういうことでこの緊張が解けるなら話は簡単なんだけど、心は頑固だった。自分を痛めつけるとなにか行動したような気になれる、あなたのしていることは遠回しな現実逃避なんだよ、現実逃避を厭うことで現実逃避をしているんだよ、と、いちおう考えてみる。眠っているあいだに納得してくれるといい。

 好きだったアニメのライブイベントが幕張でやっていて盛況だったらしい。本当は行きたかった。こんな状況でなければ、2021年の10月は僕にとって祭りの一ヶ月になるはずだった。それぞれの趣味の世界で大きなイベントが次々と開催される、されている。楽しみだったのに今はすこしも楽しみでない。趣味が生活を支えているのかと思っていたけど、実は全く逆で、生活が趣味を支えているのだと知った。どうして知らなかったのだろう。贅沢な頭で夢を見ていたのかもしれない。もういいけど。

 明日の安心の保証がほしい。明日は安心して一日家のなかでゆっくり過ごせますよという保証。電話も来客も、LINEもこないでほしい。安心して眠りたい。気がねなく本を読み、随分前に友人から勧められたアニメや映画を観て、窓をながめて静かにしたい。明日は朝から雨がふるらしい。雨なら期待できるだろうか。それでも人には傘があり、電波は雨や雪には消えない。明日は誰も来ませんように。誰も電話をかけてきませんように。