雪になりたい椿の日記

雪になりたい椿の日記です

#24

 お昼に生姜スープを飲んだ。とんでもなく苦くて、食後に鏡を見たら、頬がりんごみたいに赤かった。生姜が血行を良くするのは知っていたけど、こんなに効いたのは初めてだ。「りんご病みたいだ」と思って、すぐに「りんご病ってなんだっけ」と思う。小学生も低学年のころ、クラスに頬を真っ赤にした子がいた。その子を指して先生が「りんご病だ」と言った。それでりんご病という言葉を知った…。記憶違いかな。記憶違いでないとしたら、その子は病気なのに登校していたのだろうか。全然思い出せない。頬を真っ赤にした子。国語の教科書の挿絵に描かれた幼児みたいなその顔と、りんご病という言葉だけ頭に残ってる。

 りんご病とはなにか、そもそも、りんご病という病気が本当にあるのかどうか。スマホで調べればすぐにわかる。けど調べたらこの回想は終わってしまう。簡単に終わらせたくない。実際りんご病なんてどうでもよくて、ただ、りんご病を手がかりに記憶をさかのぼるのが心地よかった。普段はろくでもないことばかり思い出されるから、毒にも薬にもならないことを思い出して、それを自分の人生だったと思いたい。そういう記憶を最後まで残していきたい。

 調べたらりんご病はあった。