雪になりたい椿の日記

雪になりたい椿の日記です

#26

 先月末コロナに感染した。この国にコロナが来てもう何年もたつけど感染したのは初めてだった。「陽性と診断された日を0日として、5日目まで外出を控えてください」と医者に言われた。計6日間の隔離生活。「堂々と仕事を休めるなんてラッキー」と思っていたけど、最初の3日間は症状がつらくて、とても「ラッキー」という精神状態ではなかった。

 4日目から心身ともに余裕ができたので、気になっていた流行りのドラマと、友だちに勧められたアニメを全話、一気に観た。ドラマは普通におもしろかった。アニメはけっこう夢中になって、視聴後はロスで胸が苦しくなった。エロの要素は気に入らなかったけど良いアニメだった。

 そういう隔離生活を終えて、先日から仕事に復帰した。長期間仕事を休んでしまったことを方々に詫びた。前はそういうことを言えなかった。「病み上がりだから大変だろうけど」と言われたけど、久しぶりの仕事はあまり疲れなかった。むしろ隔離前より身軽に働けて自分でも意外だった。隔離中は好きなだけ眠っていたから、日頃の疲れが抜けて、返って元気になったのかもしれない。

 退勤して、隔離前に補充しそこねたものを買いに駅ビルへむかった。人ごみを歩きながら、「やっぱり今日は他人の視線が気にならないな」と思う。不思議と朝からそうだった。他人の顔色が体に入ってこない。それも充分な睡眠の恩恵なのか。それとも隔離生活によって、それまでの自分や生活まで隔離されてしまったのか。ナチュラルに客観視ができていた。どちらにしても一時的な魔法かもしれない。何日かしたら元にもどってしまうだろう。失われる前に記憶やメモに残しておこう。